模型作りに挑戦しよう
− 対象を総合的に捉えるモデルづくりの魅力 −

2007.11/23作成
2008.8/5更新

 香川県の映画館に立ち寄ったとき,偶然止めた駐車場ですごいものを見てしまった。ランボルギーニ・カウンタック。子どもの頃,何度プラモデルを作ったか分からない名車だ。なつかしいと同時に,これがまだ道を走っているというのが驚きだった。ランボルギーニ社はとうにどこかの会社に吸収されているはずだ。ガソリン代高騰の昨今,ガソリン代はどうしているのだろうと思ったりもするが,こういうのを運転している人はそんな小市民的な悩みとは無関係な世界に生きているのかもしれない。

 昨年度(平成18年)は影絵を授業に生かす取り組みをしてみた。生徒指導の発表では公開授業でも活用した。今年選んだテーマは模型。11月に国語の発表を引き当てたはらきんは,国語の発表に模型作りを使った。計画や作る過程でどのような教育効果があるか,また表現物としての模型の効果や魅力をさぐってみた。国語の表現物が模型?こんなの国語じゃない!と言われるのではないかと一抹の不安を抱えながら・・・。



 本年度はらきんは5年生を担任した。模型作りを授業に生かそうとした動機は,今年担任した子どもたちが体験を主体とした学習に非常に意欲的であったので,それを最大限に生かす授業展開をしたいと考えたからだ。国語の発表を模型でといったが,模型作りをしたのは国語だけではない。模型作りを取り入れた授業のいくつかを紹介しよう。

■ 「どんな島かな?(地勢図を再現しよう)」−4年?社会

 地図の読み方は4年生の学習内容である。青は海で,緑が平地で,黄色や茶色は山。それだけでいいのだろうか。言葉で覚えるだけでなく,地図を見て実際の地勢が思い浮かべることが出来るようにするには,模型作りが有効ではないだろうかと考えた。
 余談だが,初めて地図を勉強したとき,「山が茶色で平地が緑」と言われて,反対だと思ったのははらきんだけではないはず。日本の風景を見ていると,緑なのは山の方じゃないか。でも,これは外国の風景を写真ででも見れば納得できるだろう。


平たく伸ばした粘土を積み重ねていく
要領で作っていく。重い,水分の多い
紙粘土だったので,手が汚れて,子ども
には不評だった。
 

実在の場所の地勢図ではなく,単純化
された地図の方がいいと考えた。
完成したときに,低い山と高い山,緩斜面
と急斜面があるような地図にするのがミソ。

緑・黄色・茶・焦げ茶などの形の粘土を
階層状に積み上げていくのがコツ。
緩斜面と急斜面が表現できていない組
にはアドバイスが必要だ。

 最後に授業のまとめとして,実際の地図を見て地勢を想像してみた。「この山はどっちから登るのがたいへんかな?」「こっちから登る方が,なだらかだから楽だよ。」といった話ができた。こうした取り組みで,「日本は高く急な山が多く,平地が少ない島国」といった常識的なことも,実感をもってとらえることができるだろう。

■ メダカの観察−5年理科

 5年生の学習では、メダカを飼育・観察する。3年生のモンシロチョウとともに、小学校で学習する生物分野の代表といえるだろう。
 メダカの雌雄を見分ける学習をするところがあるが、教科書では背びれやしりびれの形や大きさで判断する程度のことしか扱っていない。雌雄の判別をするだけなら、5分くらいで終わってしまう。そこで、メダカの体を総合的にとらえるためにも、ここで模型作りを導入してみた。


背びれ・しりびれの形で雌雄の判別を
するだけなら,5分で終わる。

魚はみんな回遊魚のような流線型を
していると思っている。もともと流れの
急な場所に住んでいないメダカはそう
ではない。模型をつくるためには,上・
下・真正面・後ろなど,写真で撮られ
ることの少ないアングルからの観察も
必要だ。

完成!でも,黙ってみせられたら
シーラカンスかと思われるかも。
「しりびれが四角い」といっても,
児童によってとらえ方が違うことも
分かる。

授業中の,子どもたちのやりとり。
「しりびれって,ここ?」
「そこは尾びれだろう。」
「そうなん?じゃあ,魚のおしりって,どこよ。」
「ここからウンチが出るから,ここじゃないか?」
「なるほど。お前,するどいな。」
教師が,これは全員分かっているだろうと思っていた部分で,実は子どもたちの理解がばらばらだったことが分かる。雌雄を見分けるだけの授業に比べると,時間を使うことにはなったが,メダカの姿を総合的にとらえる上では効果は大きかったと思う。その後の授業でも,学習内容の理解を影で助けていただろうと考えている。
 ところで、なぜ「メダカ」を勉強するのか、知っているだろうか?他の学年でもそうだが、なぜメダカ?なぜモンシロチョウ?身近にいるというだけではない、深い理由を知ったとき、はらきんは感動した。

■ ミニチュア動物園を作ろう−5年国語

 平成19年度の国語の発表の本丸のである。教科書に「動物の体」という説明文教材があるが、この学習をきっかけにして動物の適応の仕方について調べ、資料を読み取り、見事に環境に適応した体を模型で再現しようと言う取り組みである。国語の表現物が模型ということが受け入れられるか心配だったが、興味深い実践だったとほめてもらった。
 この実践を思いつくきっかけとなったのは、春のバス遠足で撮った、たった一枚の写真だった。遠足の行き先は動物園。5年生が動物園に行って喜ぶかどうか、はじめ心配だった。ところが行ってみると、動物の説明のボードを読んでから観察する児童の姿が見られた。高学年は高学年なりに、動物園の楽しみ方を考えている。
 この子たちは記号を操作するような授業より、体験的作業的学習が好きなことは分かっていた。そして、動物が好きである−。子どもとはそういうものだと思うかもしれないが、この学年はそれがとくに顕著だった。


今回の実践をもっとも象徴する写真。
調べたことを本に,動物の適応の仕方
を模型で再現する。読みながら手を動
かす姿が印象的。

アザラシは低い水温と水圧に耐える
ために,厚い皮下脂肪をもっている。
細かいディテールより、その質感が
難しいと思うが、男の子はよく表現した。

制作中の「ミニチュア動物園」
フェネック、アザラシ、プレーリードック。
はじめの頃のメダカと比べて、どの角度
から見ても、その動物らしさが表現でき
ていた。
 

 前半でも書いたとおり,「今年担任した子どもたちが体験を主体とした学習に非常に意欲的・・・」という理由で始めた実践だったわけだが,後で聞いた話だが,この理由がとても新鮮だったという人がいた。その先生が言うには,「この学年にはこんな力が劣っているから,この取り組みをした,という研究がほとんどである。同和・人権関係の実践など,その最たるものだ。その点,こういう長所があるから,それを最大限生かした実践をしようという授業者の姿勢が新鮮だった」そうである。自分では気がつかなかったが,そういわれるとうれしい。
 はらきんはこうして国語の研究会で提案発表をした。終わって冷静になると,我ながらチャレンジャーだったと思う。

■ 下請け工場に指示書を出せ−5年社会

 はらきんはプラモも好きである。高校生くらいまで,艦船モデルを中心に休みの日にプラモデルをよく作っていた。地元の小さなコンクールで入賞したこともある。はらきんのこうした経歴は意外と知られていない(当然か)。だが,この経験が,日本の代表的工業製品である自動車の学習に模型を使おうという発想につながったことはたしかである。
 一台の自動車ができるまでに,本社や上位の工場から指示(指示書)が来て,下請工場はその指示にしたがって部品を作り,納品していく。この流れは,日本の産業構造を示す重要な部分であるが,教科書には図とともに,働く人の声が載っている。教師からの説明だけでさらっと流すこともできるし,子どもも分かったような気分になるところではある。しかし,繰り返すが,大事なところなので何とか印象深く教えたいところだ。そこで,プラモデルをつくる過程で,それをシミュレートできないかと考えた。
 細かいことだが、モデルは教科書に出てくるメーカーの車種を選んだ。また,プロモデルを発売しているメーカはいくつかあるが,作りやすさも考えて選ぶ必要があるだろう。


はらきんのプラモ用お道具箱。主に艦船
や飛行機を作っていた。
今は時間がなくてできないのが残念。

それぞれの工場に渡すパーツを分けて
おく。当然、教師は説明書を熟読して、
模型作りの流れを把握しておかなければ
ならない。
 

学校で勉強中にプラモデルを作る−。
予告をした日から,子どもたちはこの日を
心待ちにしていた。
指示書の代わりに,説明書に「この部品を
作りなさい。」と指示が書かれてある。
 

色を塗るようにすると、客の注文に細かく
応えるという部分も表現できるだろう。
しかし、きちんと乾いてから組み立てるこ
とを考えると、時間は相当必要だ。
 

模型作りの実践を思いついた背景には、
プラモを作った経験のある児童が多いと
いう学級の実態があった。児童は模型用
ニッパーを自主的に持ってきた。

下請工場で,タイヤを作る。下請工場
では他にも,シート,運転席のパネル
など,細かいパーツを作って,上位の
工場に「納品」する。

シャーシ、座席、ボディが本社工場に
「納品」された。サスペンションなどが
あるシャーシが一番むずかしい。地味だ
が、本物の自動車のシャーシもテクノロ
ジーの塊である。
 

最終工程の、本社工場での組み立て。

完成!
下級生が出来上がったモデルを見て,
「ぼくたちも5年生になったらプラモを
 作るんですか?」

「いつもは社会,面白くないけど,今日は面白かったよ。」(いつもは・・・は,余計だろ。)
当然子どもたちには好評だった。テストの結果を見ても,この部分の理解は良かったと思う。はらきん自身,機会があればまたやってみたい実践だ。

■ 昆虫のからだ−3年理科

 その翌年、はらきんは異動し、3年生を担任することになった。
 最終的に、昆虫の体が頭・胸・はらの3つの部分からなり、4枚の羽と6本の足があることを理解しなければならない。デフォルメされた図などがよく使われるが、はらきんはここでモンシロチョウの模型を作ってみることにした。


紙粘土、はりがね、少し厚めの紙
などでモンシロチョウの模型を作っ
ていく。

「なんかヘンじゃない?」
腹に羽がついている。子どもの
理解はバラバラであることが、
模型を作らせるとよく分かる。
 

完成!モンシロチョウらしくなった。
クワガタなど、ほかの昆虫も作ると、
さらに理解が深まるだろう。

 昆虫の体の構成が分かればいいから、図工とは目標が全然違う。作品に個性は出なくていいし、時間短縮のために、材料などの準備はけっこう考えた。
 羽に使う紙は少し堅さがないと、コピー用紙では紙粘土に刺さらなかったり、曲がって垂れてしまったりする。はらきんはフォトマット紙に、素材集にあるモンシロチョウの羽の部分だけを印刷して配った。頭・胸・腹には、適当な長さに切った竹ひご(はらきんはつまようじを使った)などの芯を入れておかないと、強度不足で、持ち上げただけで壊れてしまう。触角やストロー状の口には、高学年を担任したときに工作であまったはりがねを使った。体の太さや触角類はスケールオーバーとなるが、昆虫の体の構成を理解することが達成できればいいので、工作のしやすさも考慮して、このまま実施した。完成したモンシロチョウは、お花畑のセットなどに置くと、ちょっとしたディスプレイになる。



by harakin